賃貸のハザードマップは気にしすぎ?宅建士が教える、確認すべき4点

不動産の担当者が書類を指し示しながら説明している場面(手元のみで顔は写っていない)
※画像はAI(Adobe Firefly)で生成したイメージです

結論:見せられるのは義務。「気にしすぎ」でも「無視」でもなく、2点だけ確認すればいい

賃貸の内見や重要事項説明でハザードマップを見せられても、それ自体は2020年8月28日から法律で義務づけられた説明であり、担当者があなたを不安にさせるために見せているわけではありません。区域の外だから安全、区域の中だから住めない、という単純な話でもありません。確認すべきは「物件の位置が正しく示されているか」と「その先に何を自分で確認するか」の2点です。

なぜ賃貸でもハザードマップを見せられるのか

宅地建物取引業法35条1項14号イは、個人の借主の利益保護に資する事項を国土交通省令で定めると規定しています。これを受けた同法施行規則16条の4の3により、水防法に基づく水害ハザードマップにおける対象物件の位置の説明は、建物の売買だけでなく建物の貸借(賃貸)契約にも適用されています(2020年7月17日公布、同年8月28日施行。出典は末尾)。賃貸でハザードマップを見せられるのは、2020年8月28日の施行以来の決まりで、担当者の個人的な判断ではありません。

水害の地図のほかに、土砂災害・津波などの区域も説明の対象です。同じ施行規則16条の4の3は、建物の貸借でも、物件が造成宅地防災区域・土砂災害警戒区域・津波災害警戒区域のいずれかの区域内にあるときは、その旨を説明するよう定めています(一号から三号まで。出典は末尾)。後述する4点とは別に、重要事項説明書にこれらの区域の記載がないかも確かめてください。

「気にしすぎ」になりやすい2つの誤解

国土交通省のガイドラインは、この説明に際して次の2点への配慮を求めています(出典は末尾)。

  • 区域の外=リスクなし、ではない:ハザードマップの想定区域に入っていないからといって、水害リスクがゼロだと誤認させないよう配慮することが求められています。「区域外だから絶対安心」という説明のされ方をした場合、そこは慎重に受け止めてください。
  • 区域の中=住めない、でもない:説明が義務づけられているのは「対象物件の概ねの位置」であって、地番までの正確な特定や、契約の可否そのものではありません。区域内であることが即座に「契約すべきでない」を意味するわけではありません。

「気にしすぎかどうか」を、地図の色だけで判断しないことが出発点になります。

確認すべき4点

ハザードマップを見せられたら、次の4点を確認すれば十分です。それ以上の詳細な数値の読み解きは、担当者や自治体の窓口に確認するのが確実です(出典は末尾)。

ハザードマップを見せられたら確認すべき4点(地図の種類・物件の位置表示・最新版かどうか・浸水の深さの目安)
図:防災の目利き作成(出典:国土交通省のQ&A。詳しくは末尾)
  1. どの種類の地図か:洪水・内水(雨水出水)・高潮のうち、どれを見せられたのかを確認してください。地図によって想定している災害が違います。
  2. 物件の位置が示されているか:地図上に対象物件の概ねの位置が示されているかを見てください。示されていない場合は、その場で位置を尋ねてみましょう。
  3. その地図が最新版か:市町村が配布・公表している最新のものを使うことが定められています。作成時点が古そうな場合は、最新版かどうかを担当者に確かめてください。
  4. 浸水の深さの目安:色分けされた浸水深の数値をメモしておくと、あとで自治体の窓口や公的な資料と照らし合わせる際に役立ちます。数値の危険度の解釈は、記事では断定せず、自治体の窓口案内に従うことをおすすめします。

確認したうえで、賃貸ならではの備え方

在宅避難に備えて用意した飲料水・ランタン・携帯ラジオ・非常食を居室の窓際に置いている様子
※画像はAI(Adobe Firefly)で生成したイメージです

戸建てのように止水板を設置するといったハード対策は、賃貸では基本的に借主の判断ではできません。賃貸でできるのは、在宅避難を想定した備えと、垂直避難できるかどうかの確認です。高層階か低層階か、エレベーターが止まった場合の対応、同居家族の有無によって、必要な備えの優先順位は変わります。この考え方は、賃貸の防災セットはいらない?で整理した「セットで一括ではなく、住まい方に応じて判断する」という考え方と同じです。停電時の電源を検討する場合はポータブル電源おすすめ比較、容量の選び方、防災グッズ全般で最低限そろえたいものは防災グッズ最低限必要なものチェックリストで整理しています。非常食・保存水を見直す場合は非常食おすすめ比較、保存水おすすめ比較で整理しています。

実際に部屋が浸水してしまったときの修理・家賃・家財の負担と、直後にやることは、賃貸が浸水したら修理・家賃・引っ越しは誰が払う?宅建士が整理にまとめています。

よくある質問

ハザードマップの色が濃い物件は、契約しない方がいいのでしょうか?

記事ではそこまでの判断を代行しません。区域内であること自体が契約の可否を左右する規定はなく、浸水深の数値や避難のしやすさなど複数の要素を踏まえた個別の判断になります。不安な場合は、担当者や自治体の窓口に個別に相談してください。

ハザードマップの説明を受けなかった場合はどうすればいいですか?

説明を受けなかった、あるいは重要事項説明書に記載が見当たらない場合は、担当者に確認を求めることができます。この説明は法律上の義務なので、記載漏れを指摘する根拠として使えます。

賃貸でも止水板などのハード対策はできますか?

建物の構造に手を加える対策は、基本的に貸主の同意なしにはできません。借主ができるのは、在宅避難の備蓄や避難経路の確認など、契約の範囲内でできる備えに限られます。

引っ越し先を選ぶ段階でも、自分でハザードマップを確認できますか?

国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」で、住所を入力すれば自分でも確認できます(出典は末尾)。内見前に確認しておくと、当日の説明を理解しやすくなります。

まとめ

  • 賃貸でのハザードマップの説明は、2020年8月28日から法律で義務づけられた制度で、担当者の個人的な判断ではない
  • 「区域外=安全」「区域内=住めない」はどちらも誤解。示されるのは概ねの位置であり、契約可否の判断そのものではない
  • 確認すべきは、地図の種類・物件の位置表示の有無・最新版かどうか・浸水深の目安の4点で十分
  • 賃貸でできる備えは在宅避難の備蓄と垂直避難の確認が中心。ハード対策は基本的に貸主側の範囲

参考・一次情報源

この記事を書いた人
ひで

運営者の「ひで」は、緊急時対応業務の実務に約10年従事しています。また宅地建物取引士として、不動産の実務経験もあります。記事は、この実務経験をふまえつつ、消防庁・内閣府防災・経済産業省・消費者庁などの公的機関が公表する一次情報と、メーカーの公表情報を確認したうえで書いています。

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